養護老人ホームの固有のサービスには、介護は含まれないとの考え方から、養護老人ホームの入所者が介護が必要になった場合、介護保険の介護認定を受けて介護サービスを受けることになります。
養護老人ホームに入所者が介護サービスを受ける場合の三つの方法
養護老人ホームの入所者が介護保険の介護サービスを受ける方法は三つの方法があります。
個人契約型
これは、養護老人ホームの入所者が外部の居宅支援事業所と契約して、ケアマネジャー(介護支援専門員)にケアプランを作成してもらい、外部の介護保険事業所と契約して、ヘルパーに養護老人ホームに来てもらい、入浴介護や食事介護、排泄介護などの介護サービスを受けて、その介護保険事業所に利用料を支払いものです。
この場合、養護老人ホームの職員は基本的に介護はしません。
特定施設
養護老人ホームが特定施設入居者介護の指定を受けて、入所者と養護老人ホームが契約し、特定施設である養護老人ホームの計画担当者(介護支援専門員)にケアプランを作成してもらい。介護保険サービスを受けるものです。
外部の訪問介護ステーションからヘルパーが施設へやってきて、介護保険サービスを受ける場合を外部サービス利用型特定施設、施設の介護職員が介護保険サービスを行う場合を一般型(包括型)特定施設といいます。
しかし、外部サービス利用型特定施設の場合も、養護老人ホームの中に訪問介護ステーションを設置し、実際は、養護老人ホームの職員が養護老人ホーム、特定施設、訪問介護ステーションの職員を兼ねている場合が多いのです。
例えば、養護老人ホーム分の業務0.3人分、特定施設の業務0.3人分、訪問介護ステーションの業務0.4人分などと案分しているのです。
特定施設入居者介護は、介護保険が施行された平成12年から実施されているのですが、
平成12年から平成17年までは、軽費老人ホームや有料老人ホームしか利用できませんでした。
平成18年に、外部サービス利用型が施行され、軽費老人ホームや有料老人ホームの他に養護老人ホームでも利用することができるようになりました。
平成28年には、平成12年から実施されていた特定施設入居者介護(一般型(包括型))がようやく養護老人ホームでも利用できるようになったのです。
平成18年10月1日から多くの養護老人ホームでは、外部サービス利用型特定施設入居者介護を行っています。
しかし、従来型の特定施設入居者介護を行っている養護老人ホームもあり、そちらへ行こうしようとする養護老人ホームも増えてきました。
しかし、なかなか従来型の特定施設へ移行しようとはしません。
なぜでしょうか?
今回、平成28年度に外部サービス利用型特定施設から一般型特定施設に変更した養護老人ホームに、外部サービス利用型と一般型のメリットとデメリットを聞いてきましたので、まとめてみたいと思います。
【外部サービス利用型特定施設】
(メリット)
・各介護度の限度額ギリギリまで報酬を求めることができる。
・看護師等の配置基準がゆるい。
(デメリット)
・訪問介護ステーションを併設すると、利用票や事業所の計画書などの作成業務が発生するため、事務量が多くなる。
【一般型特定施設】
(メリット)
・事務量が少ない。(処遇方針とケアプラン作成のみ)
・介護を行う職員は、ヘルパーなどの資格がなくても良い。
(但し、介護福祉士が60%配置されていれば加算がある。)
(デメリット)
・要介護1~2の方で、介護報酬は外部サービス利用型とほとんど同じだが、要介護3~5の方が多いと介護報酬は外部サービス利用型よりも低くなる。
・看護師の複数配置が必要(特定施設契約者が30名まで、養護分1名、特定分1名、計2名の看護師の配置が必要になる。)
・福祉用具貸与を利用できなくなるため、歩行器・車いすなどは、個人購入か施設で準備する必要がある。ベットも施設へ準備する必要がある。