あなたは、「人間の脳は普段10%しか使われていない」という話を聞いたことがありませんか?
本当だとしたら、あと90%とは言わないまでも、20%使えるようになっただけで、現在の2倍頭が良くなる!と思ってしまいますよね。
本当なんでしょうか?
この「脳10%理論」が生まれた背景には3つの説があると言われています。
一つ目は、
『アインシュタイン、神を語る』の中でアインシュタインが、「我々人間は潜在能力の10%しか発揮できていない」と語ったとされるもの。
この言葉が基となって「脳10%理論」は世の中に広まったといわれています。
しかし、この言葉は科学的根拠に基づいているものではなく、アインシュタインは、「もっと努力をすれば潜在能力を引き出せるのだから、努力せよ」という意図で発言したものでした。
二つ目は、「サイレントエリア説」です。
動物の脳に刺激を与えて反応を測定するという実験が19世紀に行われました。
その結果、どのような刺激に対しても反応を示さなかった「サイレントエリア」と呼ばれる領域が観測され、眠っている脳の領域があるとされました。
しかし、最近の研究では「サイレントエリア」は、ある領域が損傷した際に、その領域の担当機能を受け持つ予備領域の機能があると判明しています。
3つ目は、「グリア細胞説」です。
脳の90%を占めるグリア細胞は、神経信号の伝達には使用されていないので、「脳は90%が未使用」といううデマにつながったといわれています。
最新の研究では、グリア細胞にも神経伝達を補佐する役割があるとされており、この説もウソであることが証明されています。
人間の脳は、各領域が共同して情報交換を行いながら処理しているので、脳全体で広範な神経活動を行っているのです。
多く処理する領域もあれば、少ない領域もありますが、脳全体に伝達されています。
脳の90%が使われていないとするなら、脳が少し損傷した程度では、人間の活動に使用を及ぼさないはずですが、実際は、少しの損傷でも日常生活に支障が出てきてしまいますね。
脳は10%しか使われていないのではなく、全ての領域が一度にフル回転しているのではなく、機能ごとにメインとなる領域を交替しながら全体を使っているのです。
でも、もうちょっと余計に脳が活動してくれるとありがたいですよね。