介護保険の介護サービスを利用するには、何から始めればいいのでしょう?
介護保険サービスを利用するためには、手続きが必要になります。
介護保険サービス利用までの流れ
(手続き1)「要介護認定」の申請をする
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(手続き2)認定調査を受ける(自宅か入院先での訪問調査)
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認定が出る(原則30日以内)
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(手続き3)ケアマネジャー(介護支援専門員)を決める
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ケアマネジャーに相談しケアプランを作る
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サービス利用開始
(手続き1)「要介護認定」の申請をする
介護保険による介護サービスを利用するには、「要介護認定」を受ける必要があります。
「要介護認定」は、その人が「介護が必要であること」を証明するものです。
認定は、
①本人またはその家族が自治体の窓口に申請をし、
②後日本人が自宅などで認定調査を受けることで得られます。
要介護認定の申請窓口
・市町村の介護保険課または福祉事務所など
(介護を必要とする人の住所地の窓口へ)
又は
・地域包括支援センター
・居宅介護支援事業所
申請手続きを行える人と申請に必要なもの
・申請できる人
本人またはその家族
・必要なもの
認定申請書
介護保険被保険者証(保険証)
(40~64歳の人は健康保険証)
申請書には「主治医」を記入する欄があり、記入された医師には自治体から「意見書」の依頼がいきます。
記入する医師がいない場合は、病院で診察を受け、申請書記載の了承を取りましょう。
申請は、介護を必要とする人の住所地の自治体に行います。
遠方の場合などには、その地域の地域包括支援センターに代行を依頼することができます。
電話で相談してみてください。
(手続き2)認定調査を受ける
申請の後は、自宅などで行政の委託を受けた「認定調査員」による「認定調査」を受けます。
申請のおよそ1週間後に「認定調査員」から「本人」または「申請書に記入した家族」に連絡があり、訪問日程を決めます。
認定調査では身体・生活・認知機能など74項目についての聞き取りと、関連する動作の確認が行われます。
調査の所要時間の目安は約1時間です。
認定調査ではどんなことを聞かれるの?
認定調査を行う認定調査員とは、自治体の職員や自治体から委託を受けたケアマネジャー(介護支援専門員)のことです。
調査では、
生活環境を調べる「概況調査」と、
身体機能、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活の適応などについて74項目の質問をする「基本調査」があります。
質問に関連して、その場で実際に体を動かす「動作確認」も行われます。
「関節の可動域を見る」ための脚の曲げ伸ばしや、
「立位の保持の機能を見る」ためのつかまり立ちや片足立などです。
すべての質問に本人が答えるのが基本ですが、ふだんの様子を知る家族などなるべく立ち合い、補足や訂正事項を伝えるのが理想的です。
判定はどのように出されるの?
「要介護認定」の判定は自治体による
・「一次判定」…認定調査の結果と主治医の意見書の一部をコンピューターに入力して行う。
・「二次判定」…一次判定や主治医の意見書を元に保健、医療、福祉の専門家が審査を行う
を経て出されます。
私も、二次判定のための介護認定審査会のメンバーの一人として参加していますが、
私の市町村の場合は、5名ずつの部会が5部会あり、ほぼ毎週審査会を開催しています。
5名のメンバーの内、2名は医師です。
1回に判定する件数は、30件くらいです。
1次判定以外になることは、ほとんどありません。
認定の通知は、申請から原則30日以内に郵送でと届きます。
「要介護認定」は、心身の状態によって
要支援1・2、要介護1~5の7段階に分けられます。
要介護度の目安
要支援1…日常生活の能力は基本的にあるが、要介護状態とならないように一部支援が必要。
要支援2…立ち上がりや歩行が不安定。排せつ、入浴などで一部介助が必要だが、身体の状態の維持または改善の可能性がある。
要介護1…立ち上がりや歩行が不安定。排せつ、入浴などで一部介助が必要。
要介護2…起き上がりが自力では困難。排せつ、入浴などで一部又は全介助が必要。
要介護3…起き上がり、寝返りが自力ではできない。排せつ、入浴、衣服の着脱などで全介助が必要。
要介護4…日常生活能力の低下が見られ、排せつ、入浴、衣服の着脱など多くの行為で全介助が必要
要介護5…介護なしには日常生活を営むことはほぼ不可能な状態。意思伝達も困難。
また、出された認定の有効期間は新規申請と区分変更(状態が変化した場合の見直し)は原則6カ月、更新の場合は原則12カ月と定められていますが、最近はあまり変化がない場合は、24カ月または36カ月まで延長が可能になっています。
期限内に認定調査を受け直す必要があります。
(手続き3)ケアマネジャー(介護支援専門員)を決める
「要介護認定」の通知が届いたら、どんな介護サービスをどれくらい利用して、介護が必要な人の暮らしを支えていくかを、1週間分の介護計画書として考えていきます。
この介護計画書を「ケアプラン」といい、介護保険サービスを利用するときには必ず作成する必要があります。
ケアプランを一緒に考えてくれるのが「ケアマネジャー」です。
ケアプランは、利用者本人やその家族が考えることも可能ですが、介護サービスの種類は多様で、介護度ごとに異なる「利用限度額」内に収める計算も複雑なため、専門的な知識を持つケアマネジャーに依頼するのが一般的です。
ケアマネジャーは通常「居宅介護支援事業所」に所属しており、利用者側で自由に選ぶことができます。
基本的に、
要介護1・2…地域包括支援センターのケアマネージャー
要介護1~5…居宅支援事業所のケアマネジャー
になっています。
介護利用者の住所地を担当する「地域包括支援センター」や自治体の窓口に行くと、地域にある居宅介護支援事業所のリストがもらえます。
得た情報から「何かあった場合にかけつけてもらえる距離にあるか」などを基準にいくつかの事業所を選び、電話で「空きがあるかどうか」「話しやすいかどうか」などを確認しましょう。
選びきれないときは、地域包括支援センターに相談することもできます。
居宅支援事業所を絞り込めたら、そこに所属しているケアマネジャーに、介護が必要な人が住む家に一度きてもらいます。
ケアマネジャーからの質問もありますが、介護についてふだんから不安に思っていること、利用者の日常生活で気づいたことなどを積極的に伝えましょう。
そのうえで、相手の対応を見極めていきます。
利用者、家族が納得できるようであれば、その後、居宅介護支援事業所と契約を結びます。