食卓で使うナイフは、
刃先が丸くなっていますね。
西洋の人々は、
長いあいだ一本のナイフをさまざまな用途に使っていました。
狩りに、
獲物の切り分けに、
それに食事にと、
自分用のナイフを常に携帯し、
いちいち取り替えたりしませんでした。
また、
フォークはまだ普及していなかったので、
昔は肉を直接ナイフに突き刺して食べたりもしていました。
だからナイフは、
先が尖っているものしかありませんでした。
やがて、
貴族たちがディナーの席につくようになって、
食卓用のナイフを使うようになっても、
刃先は依然として尖っていたのです。
その時、
貴族たちは、
そのナイフで楊枝代わりに使って歯のあいだをほじっていたのです。
しかし、
17世紀フランスの宰相リシュリューは、これが我慢できませんでした。
リシュリューは、
ルイ13世の側近として敏腕ぶりを発揮し、
フランスをヨーロッパ最大の国にした功労者であり、
洗練された趣味の持ち主だったのです。
リシュリューは、
家に招いた客人たちにも、
ナイフを楊枝代わりに使うことを禁じました。
しかし、それだけでは腹の虫をがおさまりませんでした。
ナイフを楊枝代わりとして使えなくするため、
自宅のナイフの先をすべて丸く削らせたのです。
貴婦人たちも、
男たちが食卓で歯をほじるのを苦々しく思っていたので、
リシュリューのやり方に関心して、
「リシュリュー型のナイフ」を注文するのがブームになったのだそうです。
こうして、
食卓用ナイフの刃先、
17世紀以降から丸くなったのです。
ほぼ同じころにフォークも普及しはじめたので、
ますますナイフの先が尖っている必要はなくなったのです。
テーブルマナーは、
フランスやイギリスを中心に定められていったので、
食卓用ナイフは一様に刃先が丸いものにねったのだそうです。
日本の箸を使って、
歯をほじるひとがいますが、
箸の先を丸くしてもやめないですよね。
日本には爪楊枝があるけど、
西洋では、何で歯をほじるようになったんでしょうね?