将棋では、王将と金将以外の駒、つまり「歩兵」「香車」「桂馬」「銀将」を敵陣に侵入させるときに、その駒を裏返して金将と同じ働きにすることができます。
これを「金に成る」と言い、ここから転じて「成金」という言葉がうまれたと言われています。
それぞれの駒の裏側には、晴れて金将と同じ働きができるようになったことを示す文字が書かれているのですが、
なぜか「歩兵」の裏には「金」ではなく「と」と読めるような文字が書かれていますね。
意味は「金」と同じ意味なんですけどね。
そのため、「歩兵」が敵陣に侵入して、裏返って「と」に成ったものを「と金」と呼びます。
どうして、「歩兵」の裏だけが「金」ではなく、「と」に似た文字なのでしょうか?
実は、昔は「歩兵」の裏にもちゃんと「金」と書かれていたのだそうです。
しかし、「歩兵」は、駒の数が多いので、いちいち書くのが面倒になったのか、崩して書かれるようになり、ひらがなの「と」に似た文字になってしまったという説があります。
1ヶ月や「ヶ」が、1箇月といちいち書くのが面倒なので、「箇」の上の竹冠の左側の「ヶ」と書いて、「箇」の意味だよと略したのと同じなんでしょうかね。
話がそれてしまいましたが、「歩兵」の裏の「と」は、ひらがなの「と」に似た文字であって、ひらがなの「と」ではないのです。
字を崩して書いたという説が多く「金」と同じく「きん」と読みます。
「今」を崩して書いていたら「と」に似た字になったという説もあります。
一方で、ひらがなの「と」という文字が書いてあるという説もあります。
「歩」は「止」を上下に二つ組み合わせた字だから、「止」の略字である「と」を書いたという説です。
さらには、最近の市販の将棋セットでは、「歩」(歩兵)の裏にカタカナの「ト」と書いてあるものがありますが、ひらがなの「と」でななく、「金」の意味のを崩した文字だとすると、「ト」は論外ということになりますね。